「自分中心」では残せない!家族の物語を記録する正しい続柄と作り方
「家系図」と聞くと、自分の親や祖父母を遡る「個人のルーツ探し」を想像しがちです。しかし、本当に価値のある家系図とは、単なるルーツの確認に留まらず、「家族の歴史」を次の世代へ引き継ぐものです。
ここでは、まず書き方の視点が異なる2つの家系図を比較し、その上で、今の時代にも対応できる、デジタル化による永久保存の方法まで解説します。
1. 書き方の視点で異なる2つの家系図
家系図には、「自分中心」と「家中心」という、視点が全く異なる2つのタイプがあります。
A. 一般的な家系図(自分中心・ルーツ確認型)
現在、一般的に作成される家系図の多くは、このタイプです。
項目 | 特徴 | 記載の方向 |
視点 | 「自分」個人からの関係が中心。 | 現在 → 過去へ遡る。 |
続柄 | 「自分」との相対的な関係で記載。 | 例:父方の祖父、母方の叔母 |
目的 | 個人のルーツや血縁の確認。 |
B. 家族の家系図(家中心・歴史継承型)
これこそが、かつての日本の家々が大切にしてきた、「家(いえ)」の歴史を作るための系図であり、過去帳などがその役割を担っていました。。
項目 | 特徴 | 記載の方向 |
視点 | **「家」**という共同体・単位が中心。 | 過去 → 未来へ書き継ぐ。 |
続柄 | 「家」という枠組みの中での公的な立場で記載。 | 例:先代当主、当家母、長男 |
目的 | 「家」の歴史を永続的に記録し、供養の継承を確保する。 |
※「家中心・歴史継承型」の視点を取り入れた家系図は、過去帳の「家」という歴史書であり、その続柄は「家」における故人の公的な立場を示しています。単に血筋を辿るだけでなく、故人がその家でどのような役割を果たしたのか、という「続柄(つづきがら)」を記録することもできます。
「家族の家系図(家中心・歴史継承型)を作ってみよう:作り方と保存
「家の歴史」を残すためには、故人の情報に加え、その人の生きた証を具体的に残すことが重要です。
1 作成する情報(過去帳の要素を追加する)
単なる血縁図ではなく、以下の過去帳の要素を取り入れましょう。
- 法名・戒名、俗名:個人の仏教名と生前の名前。
- 没年月日、行年(享年):いつ亡くなったか。
- 続柄:その家における立場(例:初代、二代目当主、長男など)。
- 付加情報:生前の主な出来事(例:〇〇大学卒業、〇〇会社設立)、人となり(例:特に囲碁を愛した)など、その人の物語が伝わる情報を追記します。
2 伝統的な保存方法と現代の課題
家族の歴史を伝える伝統的な方法は、「墓誌」と「過去帳」でした。
- 墓誌:お墓に刻む永久的な石の記録。屋外の記録。
- 過去帳:仏壇に納める詳細な紙の記録。屋内の記録。
しかし、近年は少子化やライフスタイルの変化により、樹木葬などの小さなお墓、特定の宗教宗派を持たないというご家庭が増えています。その結果、墓誌や過去帳を作成・管理する機会も減ってきました。
3 新しい保存方法:電子化と共有
伝統的な方法を使わない、あるいは併用する場合、デジタル技術を活用して「家系図」を未来へ伝えましょう。
- デジタル家系図(電子過去帳)の作成
- 上記(1)で整理した情報を、表計算ソフトや専用の家系図アプリなどでデジタルデータ化します。
- このデータは、単なる家系図ではなく、過去帳の記載要素を拡張した「電子墓誌(過去帳記載追加型)」*として位置づけられます。
- 分散保存とクラウド共有
- 作成した家系図データは、一つのPC内だけでなく、クラウドサービスや外部ストレージに分散して保存しましょう。
- 家族間(子どもや孫)とデータを共有し、閲覧・編集できる権限を渡しておきましょう。
まとめ
「家」の歴史は、お金や財産と同じくらい、子孫にとって価値のある財産です。この機会に、「個人のルーツ」を超えた**「家族の物語」を記録する「家系図」作りを始めてみてはいかがでしょうか。


