第3部 / 全3部

人が亡くなったときに行う手続き

― 年金などの手続き ―

シリーズ最終回は最大の難所「年金などの手続き」です。難しい用語が多い分野ですが、全体のイメージをつかむことを目標に、なるべくわかりやすく解説します。

公的年金のしくみ

日本の年金制度は、大きく二つの仕組みで成り立っています。一つは、すべての国民が加入する「国民年金」。二つ目は、会社員や公務員が国民年金に加えて加入する「厚生(共済)年金」です。会社員や公務員の年金は「2階建て年金」とも呼ばれます。

自営業等

2階部分なし
国民年金(1階)

会社員等

厚生(共済)年金(2階)
国民年金(1階)

被保険者の3区分

区分該当者年金の種類
第1号被保険者自営業等国民年金
第2号被保険者会社員等国民年金+厚生(共済)年金
第3号被保険者第2号被保険者に扶養される配偶者国民年金

給付は3種類

加入者の「老齢・障害・死亡」という原因に対して、それぞれ「老齢年金・障害年金・遺族年金」が給付されます。大切な方が亡くなったときの年金手続きは、給付されていた老齢・障害年金を停止して、未支給分と遺族年金を請求することになります。

年金手続きは大きく2つ

亡くなった方の年金の手続きは「受給を停止する手続き」と「遺族年金を請求する手続き」の2つに大別されます。停止手続きが遅れると、追加で支給された年金を返還しなければなりません。

手続き期限ポイント
故人の年金停止すみやかに受給停止と未支給年金の受給手続きあり
遺族年金の請求一時金:2年/年金:5年請求期間を過ぎると受け取れなくなる

未支給の年金と遺族年金が受け取れるのは、亡くなった方と「生計を同一」にしていた遺族のみです。生活費を同じ財布でやりくりしていたイメージです。

亡くなった方の分類による5つのパターン

亡くなった方の分類遺族への年金・一時金
1. 国民年金のみ加入中遺族基礎年金/(該当すれば)寡婦年金または死亡一時金
2. 厚生年金(共済)加入中遺族基礎年金+遺族厚生年金/(該当すれば)中高齢寡婦加算、経過的寡婦加算
3. 老齢基礎年金受給中遺族基礎年金
4. 老齢厚生年金(共済)受給中遺族基礎年金+遺族厚生年金/(該当すれば)中高齢寡婦加算等
5. 会社員の配偶者等なし

困ったら相談窓口へ

遺族年金などの仕組みには細かい条件があります。最終的には年金事務所や年金ダイヤルで相談するのがオススメです。

● 日本年金機構(年金事務所)
https://www.nenkin.go.jp/section/soudan/

● 年金ダイヤル:0570-05-1165(ナビダイヤル)/03-6700-1165

年金の受給停止と未支給年金の請求

年金は年6回、偶数月の15日に前2か月分が支払われ、死亡した月の分まで受け取れます。手続きが遅れて年金が支払われると、返還することになります。

年金受給権者死亡届の提出

提出先最寄りの年金事務所または街角の年金相談センター
提出書類年金受給権者死亡届(報告書)
必要なもの故人の年金証書、死亡の事実を明らかにできる書類(戸籍謄抄本、死亡診断書のコピー)
提出期限すみやかに

未支給年金の請求権の順序

未支給年金は、故人と生計を同じくしていた遺族に、以下の順番で請求権があります。

① 配偶者 → ② 子 → ③ 父母 → ④ 孫 → ⑤ 祖父母 → ⑥ 兄弟姉妹 → それ以外の3親等
※ 自分より先の順位の方がいる場合は請求できません。

未支給年金の請求方法

提出先最寄りの年金事務所、街角の年金相談センター
提出書類未支給【年金・保険給付】請求書
必要なもの故人の年金証書、死亡の事実を明らかにできる書類、身分関係が確認できる書類(戸籍謄本)、生計同一を示す書類(住民票等)、受取金融機関の通帳
留意点年金受給権者死亡届と合わせて提出

遺族年金を請求する

遺族年金は、家族の大黒柱が亡くなったときの、残された家族のための年金制度です。受給の前提は遺族が亡くなった方に「生計を維持されていた」こと。死亡当時に生計を同一にし、将来にわたって年収850万円を得られない方という条件があります(850万円超でも、おおむね5年以内に下回ると認められる場合は対象)。

遺族基礎年金の支給要件

故人の要件国民年金の被保険者/60〜65歳未満の国内居住者/老齢基礎年金の受給権者・資格期間を満たした人など(要:保険料納付等の資格期間)
遺族の範囲子のある妻/子のある夫/子

遺族厚生年金の支給要件

故人の要件被保険者死亡時、または初診から5年以内の死亡/老齢厚生年金の受給資格期間25年以上/1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けられる人
遺族の範囲① 妻・子(18歳未満等)・55歳以上の夫(支給は60歳から)/② 55歳以上の父母/③ 孫/④ 55歳以上の祖父母/※受給順位は①→②→③→④

支給金額の目安

遺族基礎年金(定額)子のある配偶者:779,300円+子の加算額/子が受け取るとき:779,300円+2人目以降の子の加算額
遺族厚生年金亡くなった方の老齢厚生年金の「報酬比例部分」の年金額の3/4

請求方法

提出先遺族基礎年金のみ:請求者の住所地の市区町村役場/それ以外:最寄りの年金事務所
提出書類年金請求書(国民年金・厚生年金保険遺族給付)
必要なもの年金手帳、年金証書/恩給証書、戸籍謄本、世帯全員の住民票、死亡者の住民票除票、請求者の所得証明、死亡診断書のコピー、受取金融機関の通帳、印鑑など

遺族基礎年金がもらえないとき

遺族基礎年金の要件にあてはまらないときでも、納付した保険料が掛け捨てにならないよう「寡婦年金」または「死亡一時金」が支給される場合があります。両方の要件を満たすときは、選択して一方のみを受給できます。

寡婦年金の受給要件

亡くなった夫国民年金の第1号被保険者として保険料納付10年以上(免除期間含む)/老齢基礎年金・障害基礎年金を受けたことがない
10年以上継続して婚姻関係/65歳未満
受給期間60〜64歳の妻
時効死亡日の翌日から5年

死亡一時金の受給要件と金額

亡くなった方国民年金の第1号被保険者として保険料納付3年以上/老齢基礎年金・障害基礎年金を受けたことがない
受給対象者生計同一の遺族(配偶者→子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹)
時効死亡日の翌日から2年
保険料納付月数金額
36月以上180月未満120,000円
180月以上240月未満145,000円
240月以上300月未満170,000円
300月以上360月未満220,000円
360月以上420月未満270,000円
420月以上320,000円

付加保険料を納めた月数が36月以上ある場合は、8,500円が加算されます。

遺族厚生年金に加算される給付

遺族厚生年金は受給できるが遺族基礎年金は受給できない場合、亡くなった方の妻はその空白部分を補う「加算給付」が受け取れます。

中高齢寡婦加算の要件

18歳までの子がいない妻に対する加算給付です。年額585,100円が遺族厚生年金に加算されます。

亡くなった夫被保険者であった/傷病による初診から5年以内の死亡/1級・2級の障害厚生年金受給権者/老齢厚生年金の受給権者で厚生年金被保険者期間20年以上
夫の死亡当時40歳以上65歳未満で「子」がいない/または40歳未満で40歳到達時に「子」がいるため遺族基礎年金を受けていた
受給期間妻が65歳に達するまで

経過的寡婦加算の要件

昭和31年4月1日以前生まれで65歳以上の妻が対象。老齢基礎年金が新設された昭和61年4月1日に、新制度でカバーできない人を救うための経過措置です。

亡くなった夫厚生年金の被保険者期間が20年以上(または40歳以降に15年以上)
昭和31年4月1日以前生まれ/65歳以上

児童扶養手当

配偶者が亡くなった一人親家庭などの子のために、地方自治体から支給される手当です。受給には所得制限があり、毎年8月の現況届の提出が必要です。

受給要件

① 日本国内に住所があること
② 18歳までの子(一定以上の障害がある場合は20歳未満)を監護している父・母など

支給額(月額・参考)

児童の数全部支給一部支給
1人月額42,910円月額42,900円〜10,120円(所得による)
2人目加算月額10,140円加算月額10,130円〜5,070円
3人目以降1人増すごと月額6,080円加算月額6,070円〜3,040円

※物価スライド制により毎年改定。年6回、前月までの2か月分がまとめて支給されます。

仕事中などに亡くなったとき

労災保険による遺族補償年金

仕事中に亡くなったときは、「遺族補償年金」など労働者災害補償保険(労災保険)の補償が支給されます。支給対象者は、労働者の死亡当時にその人の収入で生計を維持されていた、配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹です。

労災事故が起きた場合は、会社が手続きをするのが義務です。会社が手続きをしてくれないときは、会社の管轄地にある労働基準監督署に相談しましょう。

失業給付の受給中に亡くなったとき

失業保険(手当)の受給中にご家族が亡くなったときは、遺族は死亡前日までの未支給分の失業給付を受け取れます。生計を同じくしていた配偶者・子・孫・祖父母・兄弟姉妹のうち1人だけに支給されます。

請求期限は死亡日の翌日から6か月以内。亡くなった方の住所地のハローワークに確認しましょう。

最後に

年金の仕組みは非常に複雑です。少し頑張ってみて無理だったら、年金事務所や年金ダイヤルに相談しましょう。担当者の方も、少しでも理解しようとした努力をよく理解し、丁寧に対応してくれます。「身近な人が亡くなったときの届け出と手続き」の煩雑さが、少しでも和らぐことを願っています。

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